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32.都内 アトラクション施設


「きれいですね。」

「そうだな。スパッツィ・ネルマーレっていうんだ。水の中の宇宙って意味らしい。」

「宇宙……このガラスのボールひとつひとつが星なんですね。」


「……なあ、知ってたか? ICチップがここでは機能しないこと。」

「ここって?」

「水中を泳ぐガラス玉の中。水とガラスは著しく感度を低下させるらしい。」

「そうですか。どこもかしこも欠陥だらけですね。」

「だな。」


「今日はどうして私を呼び出したんですか?」

「うちのお袋がいつからおまえの親父と付き合ってたのか聞こうと思ってな。」

「わかりません。私も半年前に知ったばかりですから。」

「そうか。」

「すみません……」

「謝るなよ。お袋とは元々そんなに折り合いが良くなかったし、ましてや不倫なんて許されることじゃない。ただなんとなく気になってな。」

「私の父にも責任があります。」

「気にするな。もう耐えきれなかったんだろう。帰ってこないかもしれない夫を待つ現実に……。」


「……岡田さんは私が怖くないんですか?」

「どうしたんだよ、今更。最初に接触してきたのはおまえの方だろ。」

「そうですけど……」


「……前に聞きそびれたことを聞いてもいいか?」

「はい。」

「どうやって俺の連絡先を手に入れたんだ?」

「岡田さんはNSAからマークされていますから。ICチップの異常値と局内からの逃亡、それから岡田開発部長との関連でブラックリストに登録されています。」

「全て調べはついてるってことか。」

「はい。」

「なんでもありだな、NSAは。」

「そうですね。4人も殺した殺人鬼を、何事もなかったかのように高校へ通わせるくらいですから。」

「どれだけの権限があるんだよ……。普通じゃない。」

「このプロジェクトに欠陥があったことを公にしたくなかったんでしょう。」

「どういうことだ?」

「私は無感情で殺人を犯した初めての人間だったそうです。NSAには情報総監部というデータ管理部門がありますが、私のデータには一切乱れがなくて、犯行の兆候を感知できなかったそうです。"どんな状況にも冷静に対応できるだろう"。そんな建前で私を手元に置いて監視しているんですよ。」

「馬鹿みたいな話だな。」

「そうですね。世の中には私のような人間もいますし――」

「意図的に中に入ることも可能だったしな。」

「はい。人間の攻撃行動のメカニズムが完全に解明されたわけじゃないのに――」

「未完成のICチップと前例も統計もないデータを使って犯罪を抑制しようなんて勘違いも甚だしい。」


「岡田さんはこの件を売るつもりですか?」

「……正直まだ考えあぐねてる。だけど、この件の是非はいずれ問わないといけない。忘れろと言われたが、親父をこのまま犠牲にしたくないしな。」

「審判ですか。」

「ああ、いつか必ず自分がその鍵になるつもりだ。」

「これで良かったんですよね……」

「……俺の親父は丸山に陥れられた。それだけじゃない。あいつの弟はおまえのお袋に手を出して、おまえの家庭も人生もめちゃくちゃにした。酷な偶然が重なってしまったが、結果的におまえは内部の人間になって、そのおかげで俺は情報を仕入れることができる。何か問題あるか?」

「……」

「みんなが幸せに暮らせる社会を作りたかったんだろ? だから俺と手を組むことを決めたんだろ? それならもう迷うなよ。おまえも俺もこれからだよ、これから。」

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