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7.木ノ下律子


【木ノ下律子】

年齢28歳。都内の国立大学を卒業後、米国大学院留学により博士号を取得。その後、日本へ戻り、公務員の職に就く。専門は心理学、生理学など多岐に渡り、若くして総括的な地位までのぼりつめた。


 もうすぐ太陽が真上にくる。正午を間近に控えて、5人の動きに変化が出てきた。今朝のことを思い出すと、ちょっぴり笑える。みんな、昨日は眠れたのかしら? 疲れた顔でテントから出てきて、目的のものを探し始めたのはいいけれど、そこにあったのは昨日と何も変わらない砂漠。捨て犬みたいな表情で押し黙ってしまったけど、普通そこまで落胆する?


 最初に口を開いたのは金髪の男。意外だった。私はスーツの男が無駄に張り切ってリーダーシップを取りたがる気がしていたけど、空腹でしびれを切らしちゃったのね。支給がどうとか息巻いて叫んでた。お子様って本当に馬鹿ね。そんなことしてたら、あっという間に体力尽きちゃうわよ。


 案の定スーツの男が金髪をたしなめたけど、こいつもかなりの馬鹿。怒り狂ってる相手にそんなことしたって、余計に怒らせるだけなのに。結局、胸倉をつかまれて身動きひとつ取れない状態。正義感って汗臭い。ふたりそろって年下の女の子に諌められるなんて、男ってこういう時に限って情けないものね。


 あの子は見た感じ一番冷静。「ここには最低限の水と食料しかない」という言葉を「最低限の水と食料はここにある」と言い換えた。それがきっかけで今に至る。


 彼女はテントに目を付けて、シートの下や部品をくまなく確認してる。何かヒントがあればいいわね。


 スーツの男は姿を消した。行けるとこまで行ってみようってことね。この広い砂漠じゃ無駄に疲労するのが落ちだと思うけど、首尾はどうなっているのかしら? きっと何も見つけられずに帰ってくる。楽しみね。


 何もしていないのが他の3人。外国人は所在無げに視線を泳がせてる。金髪はふてくされたように座り込んでる。年長の男はその様子をじっと見てる。あの男、いったい何を考えてるのかしら。気味が悪い。まあ、そういう私も人のことは言えないけど。

 時間は飛ぶように過ぎていく。この調子だと、何も見つけらないまま一日が終わるわね。もう喉がからから。我慢にも限度があるわよ。随分苦労してるようだけど、そんなに難しいことかしら? 考えてよね。ここは、どう見たって砂漠なんだから。

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