« 8.2018年8月10日「大和中央日報」夕刊紙面 | トップページ | 10.3日目・萩原恭平 »

9.2日目・岡田祐介


 朝が来た。昨日の夜、テントの中はかなり険悪な雰囲気だった。俺はただ落ち着かせようとしただけなのに、金髪の若造には完全に敵視されてしまったし、もう一人はうんともすんとも言わない。本当に居心地が悪かった。外に出られて正直ホッとしてる。


 しかし、このまま水と食料が見つからないとまずいな。この暑さじゃ全員死ぬぞ。


 昨日は居住区の他に何か建物がないか探しに行った。けれど、どこまで歩いても何も見えなかった。果ての見えない場所を延々と歩き続ける苦痛は半端じゃない。ふくらはぎがぱんぱんに張ってる。


 この状況と審判、どっちが楽だろうか。深夜をまたぐ仕事を終えて、ひと時の眠りにつく。数時間後にはユニフォームに着替えてグラウンドへ走る。試合が始まれば軽く数時間は立ちっぱなし。よほど好きじゃないとやってられないな。


 体力には自信があった自分がこれだけ疲労していることに正直驚いてる。焦りは疲労を早めるからな。精神的にも少しずつ確実に削られてるってことか。だけど、俺はどうしても探さなきゃならない……。どうしても……。


 ん? 今、何て言った? 砂の下じゃないかって? まさか……。だけど、あり得なくはない。正解かどうかはともかくとして、この状況下で最も落ち着いて見えるあの子の言葉をあえて疑う必要はない。あれだけ歩いて何も見つからなかったんだからな。灯台もと暗しの可能性もある。一か八かやってみるか。


 足元の砂に手を差し込むと、意外なほど中が冷たいことがわかった。外は真夏のような暑さなのに、太陽に照らされた浜辺の砂とはまるで違う。干からびそうな体で焼ける地面を掻き分けるイメージが瞬時に消えた。掘り進めるのに全く苦はない。


 体感的には一時間ほどが経過しただろうか。穴の深さは軽く50センチを超え、右手の爪にコツンと何かが触れた。一瞬、地雷かと思って背筋が寒くなった。慎重に掘り返してみると、それは乾パンの入った缶づめだった。


 あった……。まさかとは思ったが、本当にあった……。


 俺の挙動を見て、5人が集まってくる。背中越しに歓喜の表情を感じる。これを受けて、俺はある提案をすることにした。


 テントの周囲に線を引いて一定規模の区画を作り、その区画をひとりひとり掘り進める。そうすれば、短時間でこぼすことなく水と食料を確保できる。みんなが俺の策に乗った。掘り起こしたものは、2つのテントの間に集め、平等に分け合うことに決めた。

« 8.2018年8月10日「大和中央日報」夕刊紙面 | トップページ | 10.3日目・萩原恭平 »

Novel 24-7 6-10」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。