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2.岡田祐介

【岡田祐介】

年齢26歳。有名私立大学を卒業後、都内で嘱託社員として働いている。誠実な仕事ぶりで、周囲からの信頼は極めて厚い。ボランティアで野球の審判を行っている。


 なんなんだよ、ここは……。広い砂漠の真ん中にテントがふたつ。ライフルの男が言ってたな。ここがおまえたちの居住区だとかなんとか。片方を男性、もう片方を女性が使えってことか。こんな何もない場所に連れてきて、俺たちをどうするつもりなんだ?


 待てよ。「おまえたちの居住区」ってことは、俺たち以外の居住区もあるのか? もしかしたら、居住区の他にも何か……。推察が尽きることはないが、ここからは何も見えない。無駄に動き回るより、今は腰を落ち着けて様子を見た方がいいだろう。


 テントの中は思いのほか広い。寝袋と衣類一式が置いてある。とりあえず着替えるか。この格好のままじゃ動きにくくてしょうがない。ここに来るまで、スーツと革靴は正直きつかった。暑さに加えて砂に足をとられてかなり参ったよ。


 Tシャツに軍パン。全員一緒なんて、まるでユニフォームだな。現役時代を思い出す。着心地はそんなに悪くないが、左耳が煩わしい。これはピアス? 長い間野球に明け暮れていたせいか、アクセサリーなんて興味のかけらもなかった。鼻に付けたり、腹に付けたり、こんなもので自己表現を主張する人間の気が知れない。


 それはともかく、人が寝てる間に耳に穴を開けるなんて、許されることじゃないだろ。手首には金属の輪っか。耳にも金属性のピアス。俺たちが逃げられないように、小型の探知機でも仕込んであるのか? わからない……。全くわからない。考えれば考えるほど頭が痛くなる。


 だいぶ日が落ちて、視界が狭くなってきた。こんな状況で集合だって? あのライフル、いちいち目障りだな。指揮官気取りが気に入らない。この闇の中でテントの場所を見失ったら完全に命取り。何かをさせるつもりなら明るいうちにしてくれよ。


 隣にいる女の震えを感じる。当たり前だ。あんな物騒なものを向けられたら、誰だって死がよぎる。この十数年で自殺者が激増したらしいが、人間には生存本能ってものがあるんだよ。


 一刻も早く、この状況を打開したい。だけど、今は従うしかない。俺は自分の身を守る。俺にしかできない仕事があるからな。失踪なんてことになったらミイラだよ。突然こんな場所に連れて来られるなんて思いもしなかった。なんとかしなきゃな。

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