« プロローグ | トップページ | 2.岡田祐介 »

1.向井あかね


【向井あかね】

年齢16歳。東京都内の高校に通う一年生。学校での成績は極めて優秀。品行方正な生徒として教師からの評価も高い。髪の色は黒。右の耳にピアス。


 アイマスクを外されて最初に目に映ったのは、見たこともない広大な砂地。テレビで見たことのある砂漠のような、終わりの見えない砂の山。ここに水はあるのだろうか。ふとそう思った。


 
私の他に女性が2人、男性が3人。歳はどれくらいだろうか。恐らく、私が最も若く、年長者も30歳前後だろう。


 
オーソドックスなグレーのスーツを着た、サラリーマン風の男性。スウェードのワンピースとミリタリーブーツが特徴的な髪の長い女性。赤いパーカーにチノパンを履いた金髪の男性。グリーンの瞳が印象的な、外国人らしき女性。しわにまみれた作業服を身にまとった、髪の乱れた男性。


 
皆、一様に硬い表情で辺りを見回している。


 
私たちを乗せてきた白いワゴン車は、五分ほど前にこの場を去ってしまった。残されたのは見ず知らずの六人と、長い銃を持った大柄な男性。彼は麻色のTシャツにカーゴパンツを履いている。全員、ここで殺されるのだろうか……。そう思わせるような、威圧感の溢れる出で立ちだった。


 
今、何時だろう。時計を見ようと手首に目を向けた時、初めて愛用の腕時計がないことに気付いた。高校の合格を祝って母が贈ってくれたもの。


 
「一歩大人に近づいたんだから、自分の時間を自分で管理して、楽しい高校生活を送ってね。」


 
そう言いながら、幸せそうな笑顔を浮かべていた母の姿を思い出す。


 
その大切な時計の代わりに手首に付けられていたのは、金属製の手錠のようなもの。しかし、二つのリングは手錠と違って鎖で繋がれていない。少しの重みを感じる以外、両手は自由だった。


 
そもそも、なぜ私はここに来たのだろう。車の軽い衝撃が妙に心地良かったことをうつろに覚えている。「起きろ」という声で目を覚まし、アイマスクを外され、車から降ろされた。


 
そうだ。あの時計は私が――。手繰り寄せた記憶の中で、粉々に砕け散ったガラクタが浮かんでは消え、浮かんでは消え。むき出しになった歯車がカタカタと音を立てる光景が、何度も何度もリピート再生される。


 
空を見上げると、太陽が傾きつつあることがわかった。きっと、もうすぐ日が暮れる。銃を持った男が「付いてこい」と呼びかけている。付いていくしかないのだろう。ここにいても何もわからないのだから。一人になってはいけない。私の直感が胸の奥底で疼いていた。

« プロローグ | トップページ | 2.岡田祐介 »

Novel 24-7 1-5」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。